2003年05月15日

なまえ。

NHK-FMのポップスライブラリーという番組がある。
夜中の番組だけど、わたしは朝の再放送をよく聞く。
今日は、干刈あがたの「借りたハンカチ」から。
 
離婚したばかりの女性のこころの内を語ってる話のようだ。
用事をかたずけながら聞いてるので、きちんと耳に入ってるわけではないが、姓を変えるエピソードが心に留まった。
 
 結婚した時、職場では旧姓のままでいこうとしたが、結婚後の姓に変えるよう言われたこと。
 結局仕事上では旧姓を通したが、給料は新しい姓で振り込まれたこと。
 銀行口座も名前を変えなきゃならなかったこと。
 
 離婚した時、仕事上の姓と給料の支払い先は一緒になったが、銀行口座をもう一度旧姓にもどす手続きが必要になったこと。
 銀行にその理由をきかれた、こと。
 
 
ふ~ん。
何の気なしにきいてて、ふと、自分が結婚した時のことを思い出した。
 
「え?姓を変えるの?」と聞かれてとまどった。そのこと。
 
自分の姓を主人の姓に変えるに当って、わたしは何のこだわりももたなかった。
実にあっけらかんと手続きをした。
いやむしろ嬉しかった。
 
思い出すと、名前がかわった瞬間から、すでに何十年も使っていたかのようにしっくりと馴染んでいたと感じる。
実は今、旧姓で呼ばれても、それが自分の昔の名前だと思い出すのに一瞬の間があったりする。
 
 
名前を変えたのは、初めての経験ではない。
高校生の時、両親が離婚した。
でもその時は、母は自分の姓を婚家の姓にしたままだった。
母が母の旧姓にもどしたのは、わたしが社会人になって数年経ってからだった。
わたしもその時に自分の姓を母の実家の姓に変えた。
 
産まれてから社会人になるまで使っていた父の姓にいたっては、いまや呼ばれても自分の姓だったという実感すらなくなっている。
 
 
そういえば、結婚したあと、銀行や郵便局、役所、免許関係などなど・・・手続きに奔走していて、妙におかしかったやりとりを思い出した。
 
窓口にいたにこやかな受付の方にこういわれたのだ。
「はい、変更届の用紙ですね。ご住所の変更ですか?」
「住所と、氏名と、...戸籍も戸主も変更です。」
「・・・。」
なんだか、おかしかった。
 
 
振り返ると、少女時代のわたしがいる。
 
産まれてから使っていた姓のまま、そこで成長がとまった自分。泣いたままの少女。
そして、結婚までのあわただしい生活の自分。戦うように働いていたっけ。
昔の名前で留まったままの私は、そこから変わらず立ち止まった、まま。だろうか。

わたしはそれをおいてけぼりにして
違う人生を、違う道を歩いているのだろうか。
何と呼ばれようと私は私、の、はずなんだけど。